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このところ憂鬱な気分が続いている。
油井暁人(ゆいあきひと)は小さいながらも、老舗である化粧品メーカーで本社企画開発部に所属していたが、先日急な辞令が出たばかりだった。
入社してからずっと、本社の中枢である重要な部署にいたのに、地方の営業所へ異動になるとは。それも全く畑違いである営業職に回されたのだ。
いわゆる左遷、なんだと思う。
その理由を、思いつかないこともなかったが、直接仕事に関係のないことだ。だから確信はあっても確証はない。
会社は女性の必需品である化粧品を扱っているので、昔から女性社員への福利厚生は手厚く、出産育児休暇なども公務員並みに優遇されている。
販売員は若くてきれいだからといって、たくさん商品を売れるわけではない。
もちろん美しくなるための化粧品を買っていただくわけだから、販売する人も美しいにこしたことはなく、最低限メイクアップのテクニックなども必要である。
それでも対面販売の場合、お客様や配属されるお店様との信頼関係が最も重要となるため、ベテラン販売員は社にとって、とても大切な存在である。だからこそ彼女たちが長期休暇を取った後もカムバックしやすい環境がそろっているのだ。
だが本社の場合は、残念ながらあまたの企業とあまり変わらず、男性優位であるのが現状だった。
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