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「現象が出ている今確認したほうがいいな。それに屈折が関わっているのならば、それが見えるための距離が必要なはずだ。傍で見ていては解らないことだったんだよ」
桜太がそう指摘すると、全員がグラウンド側へと斜めに進みながら学園長像の前に戻った。
「ううん。揺らいでいるようには見えないぞ」
亜塔が残念といった調子で言う。真っ先に逃げ水のことを話題にしただけに、これで解明されれば面白いとの思いがあったのだ。
「それにしても、遠くに離れてみると後ろの白さのせいで余計に学園長像がはっきりと見えるのが解るな。写真撮影で使うレフ板と同じ働きをしているんだろうなあ」
普段からアイドルの写真でも撮っているのか、林田の感想は独特だった。しかしはっきり見えるというのはポイントだ。これならば小さな揺らぎでも動いていたとの証言が出てくる。
「なっ」
「うわっ」
観察に夢中になっていた科学部の前で、いきなり水が吹き上がった。まさか驚かすために噴水の仕掛けでもあるのかと思っていたら、水が回り始めた。どうやら水遣り用のスプリンクラーが銅像の後ろにあったらしい。
「何だ、あれ。学園長の周りの木にだけ毎日水遣り出来るようにしてあるってことか」
迅が道路にも撒けよと言いたげに呟いた。前回の水田のところで解っていることだが、打ち水による気化熱は馬鹿に出来ない。道路を黒くするならばせめて暑さ対策はしておくべきだろう。そうでなければ無駄に南館を暑くしているだけである。北館との気温差も意外とこの道路が絡んでいるのかもしれない。
スプリンクラーが回り続けているのをしばらく見ることになった科学部だが、道路にまったく水か掛からないので迅の呟きに共感することにした。無駄に南館の壁に当たっているが、そこで気化熱を発生させてもあまり効果はない気がする。
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