第1章

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「そういえばさ」  桜太はそうメンバーに声を掛けつつ、この七不思議解明で関わった四つのことを思い浮かべていた。井戸にしてもトイレにしても図書室の棚にしても、今まで欠陥を放置していたことが不思議だった。そして極め付けがこの銅像である。 「作意を感じるな」  桜太の言葉の続きを述べたのは莉音だ。その目は冷たく怒りに満ちている。 「そうだよ。トイレにしたって、どうしてあのタイミングで掃除されていなかったんだ。実験はどう考えてもその日にやっていたとしか思えない。しかも壊れていることを知っている奴がいるのに、それが今まで話題にならなかったのがおかしい」  迅の目も鋭くなった。やはり動画問題をまだ根に持っている。それはまあ、迅のイメージに一切ないことだったから当然でもある恨みだ。 「あの井戸もさ。本来は設置を許可している場合ではないよな。埋めないで何であんなものを作っていいと言ってしまうんだ」  芳樹も常識に反する行動に苛々を隠せない。 「あの図書室の棚だって、あんな変な切り取りを誰にも気づかれずに出来るはずがない。今まで問題にならなかったのが変なんだ」  落下事件の犯人として糾弾された優我も許せないといった顔になる。しかも、お誂え向きの学校の校章入りブックエンドが倉庫に保管されていたのも怪しい。 「行くか。犯人の元に」  桜太の言葉に、逃げようとした林田を千晴がしっかり捕まえて全員が頷くのだった。  犯人は当然のように問題を放置しても糾弾されず、しかも隠し続けることが出来る人だ。それはすなわちこの学校の最高責任者。桜太たちはもがく林田をしっかりと捕まえたまま、南館の一階にある学園長室へとやって来た。 「学園長。確認したき儀があります」  桜太はノックもなしに学園長室のドアを開けると、中で呑気にお茶を飲んでいた源内にそう告げた。
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