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「うっ……でも井戸を置いた穴が出来たのはたまたまだよ。あれは創設当時には無理な話だ」
源内は何とか罪を減らそうと言い訳を始める。
「あのですね、ひょっとして俺が学校の地質調査をしようとしたのを妨害したのは、あの井戸の秘密が科学部に関係なく解かれるのが嫌だったからですか?」
楓翔は年寄りが見苦しいとばかりに違う指摘をして源内を責める。すると、やはり意図的であり作意しかなかったかと科学部のメンバーの顔が怖くなった。
「解った。儂の長年の夢を叶えてくれたんだ。君たちには褒美を取らせる。心配しなくても来年には新入生が入ってくる、とっておきの褒美だぞ」
「へっ?」
いきなりの申し出に、桜太は呆気に取られた。しかし新入生問題が解決すればぶっちゃけ学校の欠陥なんてどうでもいい。
「科学部が解くことが重要だった。これを解らせてやるぞ」
源内が高笑いを始めたので、何だか嫌な予感がするなと思う科学部だった。
最後の見てはいけない笑顔はやっぱり学園長のものだったなと、三年生になった桜太は改めて思っていた。あの夏休みの調査は、何と地元の新聞に取り上げられることになったのである。しかもお手柄科学部とかいう触れ込みで、科学の力によって学校の隠れた問題を解決というかっこいい内容に仕上がってしまった。これには源内のコネがものを言っているのは目に見えていた。
しかし新聞効果は絶大だった。あの年の秋にあった学校説明会での科学部の注目度の高さは、他の部を圧倒していた。さらにはホームページの検索数も科学部が圧倒的多数となり、いつの間にか桐生学園高等学校名物とまでなってしまっていた。
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