第1章

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 そして今日。新一年生の入部申込日を迎えていた。 「いやあ、やっぱり入部希望まで行きついたのは変人だな」  化学教室で受付をしていた桜太は、横で書類整理をしていた楓翔に向けて笑う。 「そうだな。だって好きなものがなければ入部は無理だし。大倉先輩の変人アイデンティティーは受け継がれたわけだ」  楓翔は苦笑してしまう。なぜ楓翔が書類整理をしているかといえば、あの七不思議騒動で活躍したために副部長となっていたからだ。二年生しかいないのに副部長は要らないだろうと置いていなかったが、源内の策略のおかげで部の存続が確定的になったために急遽選ばれたのだ。 「新入生は8人か。あんたち5人と合せて13人とは大所帯になったわね」  監督していた顧問の松崎もほくほくだった。それにあれから林田との交際も続いているのだから、公私ともに充実というわけである。  林田はあれからもちょくちょく顔を出すようになり、科学部ではたまに変な実験が行われるようになっていた。卒業生となった三年生たちも何かと居座り続けていたが、無事にそれぞれの大学に合格している。  意外なのは亜塔がいつの間にか医学部を受験することにして合格していたことだ。理由を聞くと芳樹の影響らしい。 「なんかさ。猟奇殺人をしなくても医学部にいけば人間の目玉を解剖できるぞって唆されて」  芳樹のアドバイスは正しいのだろうが、亜塔が医者になって大丈夫かという別の問題が発生している。しかし研究職に就くだろうから、心配しなくても藪医者にはならないだろう。  莉音はしっかり菜々絵のいる大学に入っている。恋の行方が気になるところだが、今年の二月には父上がその大学に戻っているので何とかなるだろう。三角関係に発展した場合は桜太に対処できない。
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