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お袋が倒れたとの知らせを義妹から受けて帰省した。
10年振りの帰省であった。
新横浜駅から新幹線に飛び乗り名古屋駅で近鉄特急に乗り継ぎ三時間後に伊勢市駅に着いた。
北口に弟と義妹が待っていた。
弟の運転する車で入院先へと向かった。
駅から5分とかからぬ小さな病院であった。
おそるおそる病室に入っていくとお袋が目を覚ました。
私の名前を大きく言ってから「母親の一大事やから来んといかんわな」と笑った。
お袋の笑う顔はいつも優しかった。
一安心して落ち着いたので部屋を眺めた。
ベッドの脇の椅子に年老いた男性が腰かけていた。
親父だった。
その老いた風貌に10年の不在を感じた。
面会時間ぎりぎりの20時まで側にいて親父の運転する車で二見の実家に帰って泊まり翌朝に
親父と見舞ってから東京に戻った。
三日後に義妹からまた電話が入った。
転院したと言った。
vシネマの準備とロケハン中だったがプロデューサーに事情を話して降板した。
不吉な予感と気乗りがしない台本だった。
彼は困った困ったと言ったが目が笑っていた。
儀礼的に頭を下げて制作会社を出た。
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