2歩目-王国にやって来た脳筋

2/9
前へ
/223ページ
次へ
騎士達を避けながら熊について歩いていた幸助は、ようやく森の出口に辿り着いた。 「おぉ、やっと出られた。ありがとう。本当に感謝するよ。」 心からの感謝を熊に伝えると、熊はそっぽを向きながらフンッと鼻を鳴らして返す。 「色々あったけど短い間世話になった。元気でなッ!」 そう言いながら、熊に別れを告げて背を向け歩き出す。 道には、先程の騎士達が通ったであろう跡が残っていた。これを辿って歩いていく事を考えていると予想外のことが起きた。 「…なんで付いてきてるの?熊さんや。」 そう、道案内をしてくれたあの熊が幸助の後ろをついてきていた。 まるで、自分も連れてけとでも言うような目で幸助を見つめる。幸助は、ウーンと唸りながらしばらく考えた後、諦めたのか熊を旅の仲間に加えたのだった。 仲間になるというならと、幸助は名前を付けていた。見た目が赤いところと月の輪熊のように首に三日月型の模様があることから、もじって『暁』と命名したのだ。暁は特に嫌がることなく、またフンッと鼻を鳴らす。 (流石に厨二病みたいになったかなぁ。) それからは、何の邪魔もなく進むことができた幸助達は森から離れ2日が経った昼下がり丘の上にいた。 丘の上から見た景色の中には、白い城を中心に街が広がりそれを囲むように巨大な塀が取り囲む、ファンタジーの定番王国を見つけることができた。塀の上には、先程の騎士達とは違い鉄鎧姿の兵士が見張りをしている。 「おぉ、実際に見ると迫力あるな。いやぁ、やっと人がいる所に行ける…。」 だが、ここで問題が発生した。 何も気にせず塀に近づいて行く幸助達だが、それに気づいた見張りの兵士が慌てふためき始めたのだ。何のことか分からないという表情の幸助だが、ふと横に目を向けそれに気づいた。 そう、リアル鬼ごっこから殴り合いまで果たした赤い熊の暁だ。幸助が普通に接していて忘れているかもしれないが、全長4、5メートルの巨大な熊なのだ。そんなのが近づけば誰だろうと恐怖することだろう。 「…とりあえず門まで行こう。誰も襲うなよ?」 暁に釘を刺しておいてまた歩き出す。 門の近くまで来ると、大人数の兵士が隊列を組み剣や弓を構え待ち受けていた。その中から、恰幅の良い男性が一歩前に出て叫ぶ。 「そこの者達止まれッ!!」 明らかに敵意を向けられ、暁は低い唸り声をあげながら威嚇し始める。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加