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「…知らない空だ。」
お決まりの言葉を呟きながら、仰向けに倒れていた体をゆっくりと起こす。
おもむろに体に異常は無いか確認する為にストレッチを始めた幸助は、自分に起こったこと、現在自分が置かれている状況を整理していく。
(…気を失っていたのか。確か落ちている最中、何かの光に包まれたんだっけ。)
自分を包んだというその光に幸助は見覚えがあった。
以前、その光に包まれ『消えかけてた』同級生の2人の男子生徒を助けた事があるのだが、もしかすると、それと全く同じ現象に遭遇したのではないかと幸助は頭を捻る。
が、判断材料が足りない為幸助の結論は、
「…なるほど分からん。」
である。
(とりあえず、周囲を散策するか。まずはそれからだ。にしても、此処は何処なんだ。空気が重い感じがするな…。)
ストレッチを終え周りに目を向けると光に包まれるまで緑の生い茂る山にいた筈が、草木のくの字もない程岩に囲まれた暗い谷底に幸助はいた。
本能的に此処が自分がいた場所、いや、世界ですらないのではと考え始める。
「そういえば、山田君が貸してくれた小説に同じ様な場面があったな。」
山田君とは、アニメや漫画が異常に好きで2次元の美少女しか愛せない事以外は普通な幸助の友人である。
その小説には主人公が異世界に飛ばされ魔王から世界を救うという物語なのだが、その冒頭部分と今の自分の状況が酷似していた。
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