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◇
男性騎士が大広間から出た後、長い廊下を早足で歩いている彼の背後に、同じく白銀の鎧に身を包んだ女性騎士がいつの間にか現れる。
「ローリィ、大至急兵に召集をかけろ。」
「すでに整っております、ハロルド様。後は、ご指示さえあればいつでも出発可能です。」
突然現れた女性騎士ローリィに驚くこともなく、指示を出す男性騎士ことハロルド。
「また儀式関連で何か問題が起こったのですか?」
『また』という言葉から分かるように、儀式に幾度も失敗していたようだ。毎回彼らは、この儀式での失敗による後始末を任されるためウンザリしているのだ。
そんな怪訝そうな声でローリィが質問をすると、ハロルドは苦い顔をしながら答える。
「そうなんだが…まぁ、結論から言うと儀式自体は成功した。」
「えっ?」
「成功はしたが、召喚されたはずの者がその場にいなかった。」
その言葉に疑問符を顔に浮かべたローリィは、「だから、失敗なのでは?」と返すが、ハロルドは首を横に振りながら更に続ける。
「その召喚された者が、原因は不明だが、此処ではなく別の場所に飛ばされたようなのだ。」
「なるほど…。では、かなり広い範囲の捜索となりますね。」
「その点はなんとかなるそうだ。『地脈』の力を利用して大体の位置を割り出してくれるらしい。」
それを聞き、驚いた顔をするローリィ。
地脈とは、その土地ごとに存在する大地の生命エネルギーの事だ。その力を利用するには、かなりの能力と素質が無ければ不可能なためそれを行う者達の力量がうかがえる。
「流石の『賢者』もなりふり構っていられなくなりましたか。」
「それもそうだ、命がかかってるいるのだからな。」
そんな会話をしていると、前方から魔法陣と共にあの少年が現れる。
「ハロルドさん、大体の位置が判明しましたよ。此処から西にあるカマナ峡谷周辺です。」
「ありがとうございます、ロキシム様。直ちに出発いたします。」
「はい、よろしくお願いします。」
少年ことロキシムはそう言うと、また魔法陣と共にその場から消える。
「さて、大体の場所は分かった。ローリィ、部隊の指揮をたのんだ。私は一足先にカマナ峡谷へ急ぐ。」
「了解しました、ハロルド騎士団長。」
ローリィもその言葉と共にその場から消えるようにいなくなる。
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