夢見る貘は揺籠で眠る

16/28
前へ
/28ページ
次へ
 怒りに任せて叩き落としたコンパクトは、砂地の上であっけなく割れた。  ケースの表面についていた飾りも、中身の化粧品自体も砂にまみれて粉々だ。  「だいじょぶ?」  心配顔で覗き込む夢奈にも腹が立つ。  母親の大事な物が、こんなに簡単に壊せるものだという事も、腹が立つ。  きっとこれで、また殴られる。 たくさん怒られる。  こんなに、簡単。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加