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「――踊っテくだサる? ハング」
「喜ンデ、お嬢さん」
僕は、黒焦げの肉がまだこびりついているアンデッドレディの手骨を、うやうやしく取りあげた。
ここは古い歴史を持つ広大な墓場、セメタリー第7区。雑多に居並ぶ墓石と十字架を、白い月が煌々と映し出している。
第7区と言えばちょっとワイルド。
海賊や犯罪者などの無法者や、親戚縁者が『そんな奴、知らん!』と無関係を装うような厄介者の死者がポンポンと打ち捨てられる区画。
「お嬢さん、あまリ見かけナイ腐り具合ダネ。この第7区には最近?」
「エエ。私、魔女って事で火あぶりにサレちゃって、先週埋葬されたばカリの死にたてホヤホヤなの。死者のたしなみとか、イロイロと教えてくダさる?」
真っ黒焦げで腐った頬肉をほころばせ彼女が微笑む。
イイ感じに崩れた肉片がチャーミングではあるが、数週間も経てば綺麗に白骨化することだろう。
それにしても魔女狩りとは、いやはや相変わらず生き人の世界は世知辛い。
「僕で良ければなんナリと。ココでは全てガ思うままだヨ。思えば音楽モ鳴り響き、酒だと思エバ泥水も美酒に早変わり。サア、ワルツを思い浮かべテ」
先に踊り狂う死者たちのダンスの輪に加わり、僕らも自分たちの音楽に乗せて踊り出した。
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