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「ウふふ。他のアンデッドレディたちに聞いたワ。ハングって生前は小さな国の女王の愛人だったんデショウ? なのに、他にも泣かせタ女性は数しれずって……」
「とンデもナイ、僕は泣かサれた方ダヨ。下はオムツのレディから、上はシワシワの臈長けた(ろうたけた)美しい方まで」
「マア、ずいぶんと広範囲。コ憎らシイこと」
積極的な彼女に側頭骨を引き寄せられ、大胆に唇を奪われる……
が、完全に白骨化した僕に唇なんかとっくにないから、上顎骨と歯がぶつかってガツンと鳴るだけ。
「焦らないデ、お嬢さん。真夜中はモウすぐだから……」
「それも聞いたワ。満月の夜、零時を過ぎるとアンデッドはしばらく生前の姿に戻れるっテ。アナタはどんなハンサムだったのかしラ。完全なガイコツだから輪郭もわかラない」
「白骨化するまで吊るされてたカラね」
そう、僕は絞首刑(ハンギング)で死んだ。だからここでの呼び名はハング。
僕が笑って歯をカタカタ鳴らしたところで、中央の人だかり……いや、死者だかりの方からワッと歓声があがった。
「――そんなワケで、アタシの下の息子はバカ亭主の子供じゃない。亭主の弟と浮気シタ時の子なのー!」
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