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政宗&孫市
─政宗side─
「孫市!」
不思議と孫市とは初めて会った気がしなかった。
初めて、会ったあの日から俺を気に掛けてくれるというか、見守ってくれているというか…。
兎に角、友人というには微妙な関係だった気もするがそれは年が離れているからだろうと思った。
「今夜、暇か?」
「ひ、暇じゃけど?」
俺がそう誘えば僅かに動揺していた。
そういえば俺が孫市を誘うのは初めてかもしれない。
「じゃあ、今日、俺の部屋来いよ」
「え、あ、おう…」
はっきりとしない返事を返されて俺は内心、首を傾げる。
「じゃ、俺、これから任務だから行くな」
そう言ってから、俺は孫市に背を向けて任務へと向かった。
任務から帰ってまだまだ深夜まで時間があるくらいに孫市は部屋にやって来た。
そんな孫市を部屋に招き入れ、興味津々に部屋を見渡す孫市に笑ってからキッチンに向かい、冷蔵庫からそれらを抱えてリビングへ戻る。
それら──それはたくさんの酒で俺は孫市と飲むつもりでいたのだが、それを見るなり孫市は何故か青褪める。
「それ、飲むんじゃよな…?」
ああ、と肯定する。
「お酒は…二十歳になってから…」
「はぁ?初陣したらもう飲めなきゃ恥だろ」
「いや、そうかもしれんが…」
やたらと渋る孫市を尻目にテーブルにおつまみや酒、グラスを置いて座る。
日本酒をグラスに注いで、ついでに孫市のグラスにも注いでから口をつける。
あー、美味ぇ。
なんとも言えない複雑そうな顔をした孫市に「飲まねぇの?」と問えば孫市はグラスに口をつけた。
「それにしても、よくこれだけ集められたのぅ」
「あ、…あー。小十郎がな」
この世界の酒の価格はかなり高額な部類に入るからか、孫市はそんなことを聞いてきた。
「ま、…気の置けない友人とでも楽しめっつーから」
「………ほぉか」
照れたように笑う孫市に政宗も僅かに照れたように笑った。
(前ならこうはいかないから)
(嬉しい過ぎて甘くなってしまう)
(今日だけは、忘れていることを)
(気付かないことを、今日だけは感謝しよう)
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