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廉&魁斗
_魁斗side_
「魁斗には好きな子はいないの?」
唐突にこんなことを聞いてきたのは俺の親友で、家族に近い存在である如月 廉である。
俺の家族が皆、交通事故で亡くなって、親戚に疎まれて、病院で死にたいと考えていた俺を、本当の意味で救ってくれた。兄みたいな存在だ。同い年とは思えないくらい彼は大人びている。
「はあっ!?い、いきなりなんだよ」
「いや、俺、よく聞かれるから。魁斗はどうなのかな?って」
「それは廉がモテるからだろ?……別にいないよ」
「ふうん。……いるのかと思ってた。だって、そういうの魁斗から聞かないから」
「そういうの?」
「どの子がかわいいとか、抱きたいとか、彼女にしたいとか」
「は……っ、な、なに、言ってんだよ!ここ教室だぞ!皆に聞かれたらどうすんだよ」
「今更、恥ずかしがること?もう中学生なんだよ」
こんな発言をしている廉は学校一モテる男だ。まあ、お金持ち、成績優秀、文武両道、その上、人当たりもよく温厚、最後にはこの綺麗に整ったルックスとくれば、モテないわけはない。神は廉に何でも与えすぎだ。
「廉は好きな子、いないの?」
俺はその発言が間違いだったことを知る。気づいていなかったが、クラスメイトの女子は俺達の話に興味津々らしい。ギラッと輝いた目が一瞬見えた。女って怖い。
「いないよ。だって、よく知りもしないのに……告白されてもね。……俺のことは魁斗がよく知ってるだろ?それくらいないと、ときめかないな」
ぱちん、とウインクした廉は文句なしにかっこよかったが、今の発言は頂けない。俺を女子の敵にする気か、最初からそのつもりだったのだろう。最近は、休み時間の度に呼び出される廉。そろそろ温厚な彼も鬱陶しいと思い始めた違いない。
全く、羨ましい悩み事だ。
「迷惑ならそう言ったほうがいい」
「そうなんだけど。魁斗は本当、俺のことよくわかってるなぁ」
そんなにっこり、笑ったりするから、告白されるといい加減に自覚してほしい。
その言葉にほだされる俺も大概だめだな。そもそも、神は廉にいろいろ、与えすぎなのだ。皆を味方にしてしまうこの魔性のカリスマ性もなんとかしてほしい。
(そんな平和が)
(いつまでも続くって思ってた)
(廉のことはよくわかってる)
(だから、俺を助けるためだって)
(わかってる)
(でも、納得はできないんだ)
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