フリード&バレッド

1/1

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

フリード&バレッド

「なあ、フリード。俺、アップルパイ食べたい」 あるイベントからの帰り道にバレッドはいきなり、そんなことをいい始めた。フリードにとっては迷惑極まりないお願いだった。何でそんな面倒な物を私が。ともう既に顔に書いてあった。 「買ったらいいじゃないですか」 「買っても美味しくない上に高いだけだろ。やだよ。フリードが作ったのがいい」 「何で私が、ヴェルディに頼んでくださいよ。あの人だって、料理上手ですよ」 「そう?……フリードの方が美味しいから。上手だぜ。俺はフリードの方がいい」 「…………私がそんな簡単な口説き文句に唆されると思ってるんですか」 じっ、とフリードがバレッドを睨むが、バレッドには全く効果がない。本当に扱いにくい性格だ。いや、仕事のパートナーとしては最高なのだが、時々、拘らなくていいところで頑固になる。これがなければ、パートナーとして、いうことはないのだが。 「じゃあさ、今回のイベントの報酬、分け前いらないから、アップルパイ作ってよ」 「は!?何言ってるんですか、馬鹿ですか」 「馬鹿じゃないぜ。本当にいらない。だから、アップルパイ作ってくれる?」 「本当に訳がわかりません。貴方、今日一日、タダ働きになるんですよ。わかってるんですか?」 「それより、アップルパイが大事」 「…………仕方ありませんね。本当に分け前はないですからね」 「いーよ、アップルパイ!材料買いに行こうぜ!」 「そんな、急がなくても……!」 結局、バレッドに折れたフリードはアップルパイを作っていた。しかも、材料費まで、バレッド持ちだ。意味がわからない。 目の前のカウンター席で、楽しそうにバレッドがその様子を眺めている。何が楽しいのか、フリードには全く理解不能だ。 「貴方は本当に変ですね」 「フリードは本当に現金だよな。それで、手料理食べれるなら、いいや!」 「所持金なくなりますよ」 「だーいじょーぶ。俺、強いから」 「は?」 「強い間はフリードに捨てられないだろ?」 にっこり笑うな変人、フリードは心中で毒づく。そんな本心を隠して、フリードもにっこり笑った。 「少しでも弱くなったら、ぽいっと捨てますからね」 (うおおお!アップルパイ!) (めっちゃ美味しい!!) (うるさい!)
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加