第1章

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「お前がどうなろうと、それは全部自業自得だ。でも、子供には罪はない。なのに、だ」 男が鋭い眼差しを更にキツくして、圭太を見る。 「母親は男を作って我が子を捨てて逃げた。頼りになる筈の親父は、腑抜けて使い物にならねぇ。このまま行けば、確実に親子揃って路頭に迷うだろうな。・・・まぁ、俺には関係ねぇけどな」 「仕事は、見つける。今、探しているんだ」 言い訳がましく呟く言葉に何の意味があるだろう。 妻は専業主婦だった。子供を保育園に預けてはいなかった。突然入れるにしても、どこも一杯で入所待ちの状態だった。子供を一人にする訳にも行かず、働きたくとも身動きが取れない。 否、圭太だって本当は分かっていた。 自分が仕事を出来ない理由を探し、就職情報紙をパラパラ捲るだけの日々を送っているということを。 どうしたらいいんだって焦りながらも、結局は何も遣る気が起きず、日々だらだらと過ごしているのだということを。 「見つけるねぇ」 嘲笑を含んだような笑いが男から漏れた。
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