第1章

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「どうやって見つけるつもりだ?暇は腐るほどあるみたいだが、働く気がないのに見つかるとは思えないね」 「働く気は、ある。・・・ただ、今は色々と難しいだけだ」 言い訳が虚しく響いた。 「へぇ・・・あるのか」 少し揶揄う感じに問われムッとしたように答える。 「ある」 「本当に?」 「・・・・・・多分?」 真剣な顔で問い質されれば、するりと迷いが零れ落ちた。 「・・・ねぇんじゃねぇか」 「いや、そうじゃない。そうじゃなくて」 圭太は焦ったように言葉を紡ぐ。 「・・・分かってはいるんだ。働かなきゃ、金は手に入らない。金がなきゃ、飯も食えねぇ。生活だって出来なくなる。子供を育てるのには金も掛かる。今の生活が長く続かないことも十分承知しているつもりだ。・・・女に貢いで貰うってのも実は考えたことがある。実際、面倒を見てもいいって女もいた。ただ、それは俺も男だ。悩みはしたが、やっぱり嫌だから断った。子供の教育にも良くないと思うしな」 圭太は話ながら、会って間もない男に何を必死になって言ってるんだって思っていた。こんなぶっちゃけ話、名前も素性も何も分からない男にするなんておかしい。 ーーなのに、止めることが出来なかった。
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