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「・・・・・!」
「・・・・・!・・・!」
なんだか騒がしい声が聞こえる。
五月蝿いなぁと思いながらも黒い毛のはえた三角形の耳を動かし、目を開けるとドアから紺のフードと金髪の私を使役するご主人様の姿が見えた。
「頼む!私が悪いのだから復讐をするならば私にして、娘を返してくれ!」
「ミント。君だってラムネの病を気にしていたじゃないか!『ラムネの病気、早くなおるといいね』と言ったのはきみだろう?」
ご主人様と対峙するあの金髪と口髭としわ、黒の短髪と体格の男は---お父様と友人のケシだ。二人がご主人様に必死に訴えている。
けれどもご主人様は
「たしかに、言ったわ。でも私の同意を得ずにあんな目に会わせたのだから、罰の内容は私が決める。あなたたちに何かを言われる筋合いはないわ。さっさとあきらめて帰って」
そういい放ちドアを閉めた。まだドアの向こうから声がしている。ドアを力強く叩く音も。
音はしばらくしてようやくやんだ。
きっと明日も二人ともくるんだろうな。
心配かけてごめんね、二人とも。
でも、諸悪の根元は私。ミントが絶望するきっかけを作った自分が罪を償うのは当然だから。
ミントが----ご主人様がこちらに歩いてくる。二人への対応に疲れたのか一つ息を吐いていた。私は今までいたクッションから立ち上がり、彼女の元へ行く。桃色の首輪についているリボンが揺れる。
「おかえりなさい、ご主人様」
私がご主人様に言葉をかけると、彼女は優しい顔でしゃがんだあと頭を撫でて
「ただいま、ラムネ。こめんなさいね。いま、夕食にするから」
と言って立ち上がり、キッチンに向かう。
私は返事の代わりに一つにゃーと鳴き、クッションに戻りうずくまる。
---大丈夫。みんなの罪は私がすべて請け負うから。
私はそんなことを思いながら目をつぶった。
終わり
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