モノローグ

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    かってうれしい はないちもんめ     まけてくやしい はないちもんめ     あのこがほしい あのこじゃわからん     そうだんしましょ そうしましょ  僕は昔からこの童歌が嫌いだ。必要な子と必要ではない子を分ける、残酷な童歌だ。  僕はいつも決まって必要ない子側だった。  親は、いらない子と思ったらしく、僕は生まれてすぐ孤児院に捨てられていた。  そのままそこで育てられ、天野優という名前をもらった。そこでも必要とされるわけでもなく、かわいくない、お前なんかいらない、早く出て行けと言われ続けた。  僕だってこんなところにいたくなかった。だけど、子供である限り、働いて生活費を稼ぐわけにもいかず、施設の世話になるしかなかった。  一人で生きていくために手に職をつけようと思い、中学を卒業したら調理課がある高校に進学した。そして今日、僕はその高校を卒業し借りたばかりのアパートへ帰るところだ。  帰り道の桜並木は、つぼみがふくらみ始めている。もうすぐ春がやってくる。  卒業したら、ホテルの調理スタッフとして就職が決まっており、その近くの安いアパートを借りた。  これで独り立ちできる。  やっとあの場所から解放される。お前はいらない子、と思い知らされたあの場所から。  喜ぶべきなんだろうが、僕の気分は重かった。  だって僕はそこから逃げてきただけだから。住む場所が変わっただけで、何も変わっていない。新しいところにいったところで、僕のことを必要としてくれるかわからない。  また、いらないヤツと言われるんだろうか。  新入社員なんだから、使えなくてあたりまえだが、僕にとって「いらないヤツ」と言われることはすごく辛い言葉だ。自分の存在を全否定されてるみたいで。  今僕はかなり辛い。ずっと誰も僕を必要としてくれないから。  (ああ、なんで僕はずっとひとりぼっちなんだろう。)  誰か一人でいいから、僕のことが必要って言ってくれる人がいないかな。  その一言だけで、きっと生きていける。それくらい、弱っている。  神様、いるなら僕のお願い、きいてくれませんか?  今まで、一人でがんばって生きてきました。  でもひとりぼっちは寂しいです。  神様、本当に本当にお願いします。もう寂しくて死んでしまいそうです。  僕がいてくれて良かった、って言ってくれる人に会わせてください・・・
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