第一章

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 優は、親に捨てらた劣等感から人間不信になってしまい、自分に行為を寄せてくれてもそれを信じることができず、友人どころか恋人すらいない。 いつか自分なんか嫌いになって捨てるくせに、いつもそう思っていた。  小さいころは、大人達がそんなことはない、と説得していたが、頑なに否定し続けると、いつしか説得する大人も消え、気付いたらひとりぼっちだった。  誰からも愛されずに育ったせいで愛情というものがわからず、人を愛する感情が抜け落ちていることは自覚していた。だから、友人や恋人がほしいと思うことはあったが、特定の誰かと仲良くなりたいと思えないせいで、今までひとりぼっちできてしまった。 「なんでそんなことまで知ってるんですか?興信所か何かですか?」 「ここには、私の友人がたくさんいるので、教えてもらったまでです。」 男はにこっと笑って背中の翼をバサリとふるわす。 (翼?ってことは、鳥が友達?) 「そんなことより、さあ、もう日が暮れる。私は夜目がきかないんです。さっさと行きますよ。」 「えっ!?えっ、ちよっと!」 男はそう言うと、優をわきにかかえ、窓から外に出る。黒く大きな翼が、グワッとひろがり、大きな音を立ててはばたく。瞬く間に空へ舞い上がり、どんどん高度をあげていく。下は気を失いそうで見れない。  茜色の空に、何かキラッとと光る穴が見える。どうやら、あの光に向かって飛んでいるようだ。 「入りますよ。しっかりつかまってください。」 そう言われて、優は思わず男の腰に両手でしがみついた。 (こんな高さで落ちたら死んじゃうよ!) まばゆい光に目を開けていられず、ぎゅっと閉じると、突然、何かに吸い込まれる感じがした。その、ものすごい空気の圧力に耐えきれず、優はいつの間にか気を失っていた。 (まぶしい・・・。もう朝?あれ、ここ僕の部屋じゃない・・・) 優は昨日起きた出来事を思い出し、ガバッと起き上がる。  辺りを見渡すと、ふわっと木のいい香りがした。この部屋全てが木でできているからだろう。板張りの床、壁、天井、扉、柱、全てが木製だ。まるで神社の中にいるみたいだ。  優は、その部屋の、床の上に敷かれた分厚い畳の上に寝かされていたようだ。
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