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窓側の最後列
クラスにいれば自然と人気の高い席であり、教師や他の生徒の目につきづらくまた吹き抜ける春風や麗らかな陽射しが温かくてとても心地のよい場所だ
例に漏れずわたしもこの席を気に入っており、次々と席を変わってほしいと申し出てくる生徒達を追い払う作業を続けていた
なにもわたしは昼寝がしたいが為にこの席を死守しているわけではない、ただ人目につきづらいこの席はわたしにとってのセーフティゾーンなのだ
他の生徒という有象無象に交じって滞りなくこの学園生活を過ごしたい、それだけである
梃子でも動かないわたしの意思をようやく感じ取ってくれたのか生徒達は諦めて自分の席へと戻っていった
意思を汲み取れるのであればもう少し早くに気づいてほしいものだがさすがに言うのは憚られるので口は閉ざしたまま開いていた本に目を落とした
小さく聞こえてくるくだをまいたような小言を流れるように聞き流しながら
「わたしという存在」
それにしても今回はどういうわけか女子生徒からのお願いがやけにしつこかったな
はて、どうしてだろうかと席に座ってから一度も上げていない視線を持ち上げて辺りを見回してみる
隣の席の人物を視認した直後に全てを理解した
なるべく不自然にならないことを心がけて視線を隣の席からそらし、再び本へと目を落とした
しかし先ほどとは打って変わって全くと言っていいほど内容が入ってこない
何かに熱中すると周りが見えなくなるのが悪癖であることを理解していたはずなのに!
なぜそれを忘れてしまうのか、わたしの脳みそよ!
隣の席にはなぜかあの人が座っていた
同じクラスになれただけでも幸運であると考えていたというのに、まさか隣の席になるだなんて考えもしなかった
神よ!なぜそのように荒ぶるのか!
落ち着いてみよう、一旦本を閉じて外から吹き入れる風と景色を感じてみるのだ
少しばかり散り始めて若葉の目立つ桜の木と新入生を迎えるために植えられた色とりどりの花、卒業式の日までにあと何度見ることになるだろうその景色にどことなく哀愁を感じながらも和む
・・・そうだ、隣の席があの人だからと気負うことはない
ただのクラスメイト、それだけのことだ
・・・けれどこれからは不用意に右側を見ないようにしなければ
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