わたしという存在

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うだるような暑さとじりじりと焼け付くような日射しに目眩を覚えながら、頭上高くに爛々と輝く太陽を見上げて深く息を吐いた 止まることを忘れてしまったかのような汗はぽたぽたとコンクリートに落ちていき、濃い黒の点をいくつも描いては、強い日射しに当てられてすぐにそれらは乾いてしまった 何故こんなにも陽が高いうちから外に出ているのかだなんて、どちらかといえばこちらが聞いてみたいものだ 「ほら、香織! 今日は一日付き合ってもらうんだからね! ちゃきちゃき歩く!」 「別に付き合うのは構わないけれどいったいどれだけ買うつもりなの」 「香織が買わなさすぎなのよ 最後に服買ったのいつだったか言ってみなさいよ」 「ええと・・・・・去年の、2月頃だったかな・・・」 「1年よ!1年! そろそろ香織が化石にでもなっちゃうんじゃないかって心配してるのよ!わかる?」 「し、志穂・・・待って、目が回るから・・・!」 鬼気迫る勢いでわたしの肩をつかんでガクガクと揺すぶる志穂に搾りだすようにして呻いて見せると、ようやく渋々といった様子で手を離してくれた そもそも服なんて着られればなんだって構わないでしょうに、こんなにも必死になって着飾らなければならない道理もないだろう まあ好きで着飾っているのであれば文句を言われる筋合いもないだろうから、無理に口を開くこともないかと押し黙る 「こうなったら香織を今よりも可愛くなるようにコーディネートしてあげるわ! それで意中の相手を釘付けにさせればいいのよ!」 「志穂 それはただのありがた迷惑よ」 色恋沙汰に直面したときの志穂はとてもじゃないがわたしが止められるほど大人しくはなく、とてもパワフルだ 何度も言っているけれどわたしはあの人に思いを伝える気は毛頭ないのだ、だというのに志穂は「初めてのことなんだから」と一貫して攻めの姿勢を崩さない お節介とも思えるその姿勢が、わたしが考える彼女の良いところだと思う ・・・だから、わたしのようなどうしようもない人間なんかにもずっと手を差し伸べてくれたんだと思う 「さあ、まだまだ買うわよ!」 「破産しないようにね」 .
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