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「あ、ああっ……」
凄い。凄いよ。白崎さんが食べてくれた! 牛乳だけでも驚きなのに!
パンから口を離し、チラリと俺を見上げ、小さくかじったハンバーガーをモグモグ咀嚼する白崎さん。齧った部分はほんの少しだけなのに、ずっとモグモグしているのに、なかなか飲み込めない様子。白崎さんの表情がだんだん悲しそうになっていく。
「うんうん! 白崎さん、よく噛んで下さい。ゆっくりでいいんで。あ、牛乳飲む?」
俺は眉毛を垂らして悲しい顔になってる白崎さんを助けたくてコップの牛乳を持ち上げた。白崎さんは持っていたハンバーガーをお皿へ戻しコップを受け取ると、背中を丸めてコップを口につけた。牛乳を口の中に含んで、まるで錠剤の薬でも飲むように顔を上げ、ごっくん! と、いつまでも口の中に留まっているハンバーガーの欠片を牛乳と一緒に喉の奥へ流し込む。
「!」
成功? と思った瞬間、白崎さんは手の甲にバッと顔を伏せた。ゴホッゴホ! と激しく咳き込んでしまう。
「だ、大丈夫ですか!?」
背中をトントンと軽く叩いて白崎さんを覗き込む。白崎さんは苦しそうに目尻に涙を浮かべ胸に拳を当て言った。
「……なんか、タイミングが上手くつかめなくって……」
「うんうん。久しぶりだもんね。でも、食べてくれて凄く嬉しかったよ! ありがとうね!」
「ごめんなさい。少し、喉が痛い」
申し訳なさそうに俺を見上げる白崎さん。
「謝る必要ないよ! 朝からこんなガッツリいけないよね? 明日はお粥作って貰うからね?」
白崎さんは俺の言葉に小さく頷く。俺は「ちょっと待ってね」と、邪魔なトレーを持ち上げ部屋を出ると、通路の台車へ戻した。台車には用意しておいた一冊のノートとペンケース。それを手に取り部屋へ戻ると、前々から考えていたことを白崎さんへ提案してみた。
「白崎さん、文章書くのは好き?」
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