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「……文章?」
「あのね。その……ノートに、今日の出来事を……その、書いておくのってどうかな? って思って」
白崎さんは納得するように視線を落とし静かに答えた。
「俺の……脳の変わりですね」
小さく微笑む。その反応にホッとして、ノートとペンケースを白崎さんへ差し出した。
「これ、俺からのプレゼントです。良かったら使って下さい」
「どうも」
白崎さんは差し出したノートと布製のペンケースを、ペコッと頭を下げて受け取ってくれた。ペンケースの中に入っているのはペン先の丸い太字のボールペンのみ。渡辺さんに相談して山田室長の許可を得て、やっとOKをもらった物だ。勿論、今以上にモニターチェックもする必要がある。トイレに行く時は誰かにモニターチェックを交代してもらわなければいけない。それでも、試す価値はあると思うんだ。
「この机も、この部屋にあるものも、白崎さんが自由に使っていいんで……」
白崎さんは視線をチラチラ動かし部屋を見ると、コクンと小さく頷き少しだけ笑ってくれた。それから手に持っているノートをちょっと上げてみせる。
「これ、やってみます」
「うんうん。じゃあ……そうだ。ここにね? 着替えとタオルあるんだ」
俺は本棚の隣のクローゼットを開けて白崎さんに説明した。
「シャワールームあるから、良かったら使って? 確か、白崎さん昨日は頭洗ってないから……痒くない? きっとサッパリすると思うよ」
「あ、……そうなんだ。うん後で入ります」
俺の言葉に恥ずかしそうに俯く。
「あ、身体はね? 白崎さんが眠ってる時にちゃんとキレイに拭いたから大丈夫だよ?」
「なんか、すみません。ちゃんと体、動くのに……」
「ううん。そんなのどうでもいいし。って時は誰でもありますよ。俺もよくあります」
チラッと視線を上げた白崎さんは、俺の言葉に合わせるように「ふっ」と愛想笑いした。
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