第1章

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仕事から帰ると、出迎えてくれる者は誰もいない。 自分が寝泊まりしているマンションの一室のドアを開けるたび…私は虚しくなる。 仕事にかけつけて、相手も探さずにいたら気がついたら30代後半になっていた。 もう暮らすのには困らないが…食事の支度さえ手間だ。 「おかえり。」 未練があるわけではないのだけど…誰かにそう言って欲しかったな。 いや…ちょっと興味があるぐらいで。 その後、化粧を落として着替え…冷凍食品のボンゴレを解凍して夕食にする。 夕食を食べながら、面白そうなニュースを検索する。 「歴史上のイケメン偉人…胸キュンランキング?」 最近、多いんだよね…歴史上の偉人と恋愛するゲーム。 あまりにも発売されるゲーム数が多いので、人気ランキングまでやっていたりする。 私の資料代わりのひとつだ。 「やっぱり武将のファンは強いな…新撰組や戦国武将は鉄板だわ。」 武将関連との恋愛ゲームは巷に溢れている。 ファンタジー要素を持つ作品もあり…彼らとの恋愛を語る女子は少なくない。 とはいえ、世の中武将以外にも偉人と呼ばれる人間はたくさんいる。 未来にもっと恋愛ゲームが進化したら、たくさんの偉人が恋愛対象として攻略される日が来るかもしれない。 恋愛系キャラクターの開発の仕事を始めてしばらく経つが…ここ最近、一向に業績が伸びないのは結婚前だからと同僚からは影口を叩かれる。 足を引っ張るなということだろうか…とはいえ、今から転職するつもりはさらさらない。 何より、負けっぱなしはシャクだ。 単に、女の意地だった。
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