1人が本棚に入れています
本棚に追加
「おぃっ?!あんな技をユリウスは
今まで隠していたのかっ?!」
驚いているのは僕だけではなかった。
会場にいた客のほとんどが初めて目にする
ユリウスの隠し技に驚きを隠せない様子で
勝利宣言を受け、誇らしげに微笑むユリウス
に対して拍手ではなく、動揺を隠せない
どよめきの声が包んでいた。
「渡辺オーナーも粋ね。今年最後の
決勝の舞台で『三千世界』を使うなんて」
ファームまで観に行く程のファンである
アヤコさんは、密かに練習していたのを
知っているようであった。
年明けに発売された「週刊セイバードール」
ではユリウスの三千世界が大々的に特集され
「準決勝での負傷は狙ったモノ」だと語り
ユリウスの隙を減らす結果になった。
年明けのドール公式戦は、大きなモノはない
が、かといって小さなモノでもない。
僕はそんな最中に、ある重大な問題に
直面する事になった。が、逃げるように
毎週のように来ている、闘技場に来る。
「どうしたの?元気ないみたいね」
アヤコさんは鋭い。…というか毎週のように
会っていたら細かな変化に気付くのだろう。
僕の後ろ姿と顔色で直感したようだ。
「小さくはないけど、大きな問題だよ…
年明けのセイバードール戦のようにね」
最初のコメントを投稿しよう!