シルバーリング

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シルバーリング

 久々に会った学生時代からの友人が、いいでしょと見せてくれたリング。  シルバー素材らしいけれど、縁日の露店で買った物だからそこのところは信じていない。でも、デザインが良かったから、少し値は張ったけれど買ってしまった、だそうだ。  素材のことはよく判らないけれど、縁日で売っていたにしては素敵なデザインで、ちょっと高くても欲しくなる気持ちが判るリングだ。  だけどリングには、一つだけ気になる部分があった。 「このリングの内側、変わった色だね」  普通、シルバー材のアクセサリーは銀一色なのに、そのリングは指にはめる部分の内側が、ほんのりピンク色をしているのだ。 「錆びにくくするための特殊加工なんだって」  友人が、露店の人に聞いたことをそのまま教えてくれる。私も詳しくはないので、そうなんだとしか返しようがない。  そしてそれっきり、リングの話はおしまいになった。  …そんな会話から半年ばかりが経ったある日、友人が事故で亡くなった。  車にはねられ、即死したのだ。  たくさん泣いて、他の友人達と彼女のことを偲び合った。その傷が徐々に癒え出した頃、職場の飲み会で、隣に座った同僚が嵌めている指輪が、亡くなった友人と同じデザインの物だと気づいた。 「それって、もしかして、露店で買ったの?」 「えー、よく判ったね。ちょっと前に縁日で買ったの」  聞けば、シルバーアクセサリーを扱う露店で購入した品で、少し高かったけれどデザインに惹かれて購入を決めたらしい。 「ちょっとだけ、見せてもらっていいかな?」  そう告げると、同僚はすぐにリングを外して渡してくれた。  妙に記憶に残ってる、友人の持っていた物と同じデザインのリング。でも一つだけ違う部分がある。それは、リングの内側部分の色だ。  あの日見た友人のリングは、内側がほんのりピンク色をしていた。でも同僚のこれはもっと赤い色をしている。 「シルバーリングなのに、中が赤なんだ。変わってるね?」 「何か、錆びよけの加工なんだって」  友人と同じことを答える同僚に、少し不安な何かを感じながらも、大量生産の既製品なら、同じデザインの物があってもおかしくはないし、特殊加工の色味が違っていてもそうまで変ではないと思いながら、私はリングを同僚に返した。
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