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「ただいま」ドアを開けながら彼女がわざとらしいほどの大きな声で入ってきた。
「おかえりなさい」僕は律儀に玄関まで小走りでむかえにでる。
彼女の仕事はキチンと時間に終わるので僕の時計代わりにもなっている。
「もうじき6時かあ~~」
うーんっと腰を伸ばした後で
「じゃ、ご飯をつくろうか」と言った。
僕と彼女の出会いは平日のファミレスだった。
僕は浪人生だ。
英語が苦手でできればやりたくないけど、でもそういう訳にはいかないよね。
一生懸命考えた結果、図書館が高校生で賑わう夕方前にファミレスに移動して場所を変えてみることにした。
ファミレスはテーブルも広いし、ドリンクだけで粘れるから穴場なんだ。
でも夕食時間までには場所を空けなければならないから自分の中で短期決戦の場として使うことにしたんだ。
6時前、僕と彼女は相席になった。
僕は英語の問題を解いていた。
自慢じゃないけどやっぱり英語は苦手なんだなあ。
いや大分苦手だ。
というか実は嫌いだ…なんてループにはまり込んだ僕は本当なら帰る時間だけど、ちょっといやかなり予定より遅くなってしまっていた。
焦る。
んーんん、最後の問題がどうもしっくりこない。ここまで終わらせたいんだけどな、こういう時は…
「ここがね、ポイントなのよ。」
急に声をかけられてびっくりしてる僕に彼女は人差し指で文をなぞった。
これを参考にしてね。
「あ、そうか」
ありがとうございます、と顔を上げると彼女がニッコリしていた。
「いえいえ解るところだったから良かったわ。」
彼女のサラダが運ばれてきた時に
「すみません、ありがとうございました」
と慌てて帰ろうとする僕を彼女は引き止めた。
「嫌じゃなかったら。ゴハン、一緒に食べてくれない?」
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