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水族館近くの停留所までは、バス一本で行ける為、広場近くの停留所は家族連れや恋人同士などで賑わっていた。
事前に調べた時刻表と今の時刻を見比べた結果、次のバスは5分後らしい。
「嶺也、次のバスちょっとパスしないか?」
「え?あ、そう言えば紫月さんバス座ってないとキツイんだっけ?」
「おう。だからよ、その次のバスにしないか?」
「うん、全然大丈夫だよ。せっかくのデートなんだし、のんびり楽しくしたいし。」
「ありがとな。」
今出来る精一杯の笑みで礼を述べた。
そしてもう一度、時刻表と現在の時刻を見比べ、この次のバスが10分後に来る事を確認した。
「この次のバス10分後らしいから、どっか日陰でも入って待ってようぜ。」
「賛成。あ、紫月さん何か飲み物いる?何なら買ってくるから。」
そう言って、繋いだ手とは反対側に持つ空のペットボトルを持ち上げた。
「う~ん、何があるかによるな。はぐれたら面倒いし、一緒に行こう。」
「了解。でもこの広場販売機無いから、出てちょっと歩いたとこの奴になるけど。」
「俺は女じゃねーし、大丈夫だ。ちょっとやそっとの事じゃ弱音吐かねーよ。」
むすっとしていると、嶺也は何故か頬を緩ませだした。
「(気使わないでいいって言えばいいのに…素直じゃないなぁ。ま、そういうとこも可愛いんだけど。)それもそうだね。じゃ、行こっか?」
首を傾げ、賛同の声を待つ様子は宛ら忠犬のようだった。
「おう。」
その様子が何だか可愛らしく、思わず笑みを零しながら、そう返した。
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