18人が本棚に入れています
本棚に追加
やって来た救急隊員と、周りの人の協力により、鉄柱を短く切断する事に成功。
切断は工事現場の作業員から借りたチェーンソーによって行われた。
地面から引き剥がされた嶺也はすぐに救急車に乗せられた。
俺も付き添いとして乗り込み、周辺の救急救命センターに運び込まれた。
手術中の赤いランプが点灯し続ける事、約3時間。
俺が連絡した嶺也の家族が到着した。
来たのは大学生の兄と母親だけだった。
父親は福岡に出張中らしく、到着まで早くても2日はかかるそうだ。
祖父母は既に他界しており、下に兄妹はいない為、結果として兄と母親だけになった。
そして家族が到着した2時間後、不意にランプが消えた。
それと同時に手術室の扉が開き、キャスターに乗せられた嶺也の顔には白い布が被せられていた。
「手を尽くしましたが…残念ながら。詳しい状態は別室にてご説明します。」
「…はぃ……」
「そ、そんなぁ……ううっ、ふっ……うあぁああああ…」
「嘘…だろ…?なんで……れ…いや……が…?」
まともに返事出来そうなのが俺しかおらず、返事したものの…その声は余りに小さくか細いものだった。
その後、兄が母親を支えながら別室へと移動し、ドクターからの説明を受けた。
「隊員が現場に到着した時点で、鉄柱が心臓などの内臓部分を貫通しており、救出するには鉄柱を切断する以外の方法がありませんでした。
救急車に乗せた時には、既に心肺停止の状態になっていました。
微かに息はありましたが、運び込まれた際には既に息もなく、意識不明の重体でした。
鉄柱を取り除くなどの作業後、様々な手を尽くしましたが、意識は戻る事なく、19時16分死亡を確認しました。
それでお聞きしますが、息子さんはドナー登録されていますか?」
「確か…してなかったと…思います。」
「分かりました。」
嶺也の遺体についての話がされ、様々な手続きがされた。
俺は途中で返されたが、葬儀の際また呼ぶとの事で、その日はそれで終わった。
自宅に着いても何もする気が起きず、飯も取らず、着の身着のままでベッドへとダイブし、死んだように眠った。
時は残酷に過ぎ、付き合った頃より始まったであろうカウントダウンは0を迎えてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!