3日後ー残酷に進む運命の刻

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やって来た救急隊員と、周りの人の協力により、鉄柱を短く切断する事に成功。 切断は工事現場の作業員から借りたチェーンソーによって行われた。 地面から引き剥がされた嶺也はすぐに救急車に乗せられた。 俺も付き添いとして乗り込み、周辺の救急救命センターに運び込まれた。 手術中の赤いランプが点灯し続ける事、約3時間。 俺が連絡した嶺也の家族が到着した。 来たのは大学生の兄と母親だけだった。 父親は福岡に出張中らしく、到着まで早くても2日はかかるそうだ。 祖父母は既に他界しており、下に兄妹はいない為、結果として兄と母親だけになった。 そして家族が到着した2時間後、不意にランプが消えた。 それと同時に手術室の扉が開き、キャスターに乗せられた嶺也の顔には白い布が被せられていた。 「手を尽くしましたが…残念ながら。詳しい状態は別室にてご説明します。」 「…はぃ……」 「そ、そんなぁ……ううっ、ふっ……うあぁああああ…」 「嘘…だろ…?なんで……れ…いや……が…?」 まともに返事出来そうなのが俺しかおらず、返事したものの…その声は余りに小さくか細いものだった。 その後、兄が母親を支えながら別室へと移動し、ドクターからの説明を受けた。 「隊員が現場に到着した時点で、鉄柱が心臓などの内臓部分を貫通しており、救出するには鉄柱を切断する以外の方法がありませんでした。 救急車に乗せた時には、既に心肺停止の状態になっていました。 微かに息はありましたが、運び込まれた際には既に息もなく、意識不明の重体でした。 鉄柱を取り除くなどの作業後、様々な手を尽くしましたが、意識は戻る事なく、19時16分死亡を確認しました。 それでお聞きしますが、息子さんはドナー登録されていますか?」 「確か…してなかったと…思います。」 「分かりました。」 嶺也の遺体についての話がされ、様々な手続きがされた。 俺は途中で返されたが、葬儀の際また呼ぶとの事で、その日はそれで終わった。 自宅に着いても何もする気が起きず、飯も取らず、着の身着のままでベッドへとダイブし、死んだように眠った。 時は残酷に過ぎ、付き合った頃より始まったであろうカウントダウンは0を迎えてしまった。
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