気付く思い…そして、未来

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葬儀も終わり、嶺也が好きだったという丘の近くに墓が建てられた。 白っぽく少し凝ったデザインの洒落た墓だ。 何とも嶺也らしいような感じがする。 嶺也が死んで以来、俺はずっと部屋に引き篭り、葬儀なんかの重要な事以外は動かなかった。 水とゼリー以外喉を通らず、見る見るうちに痩せ細り、髪もボサボサ伸び放題で、見るに堪えない状態だ。 そんな状態になっても考えていたのは嶺也の事だった。 俺は昔からかなり冷めており、人付き合いは最低限で、友人は飛鳥だけ、恋人はHしたら別れてしまう。 人を愛した事など一度もない。 好きになろうとすればする程に、冷めていく心と身体。 高校に入っても変わらない退屈な日々。 2年になって、1ヶ月経った頃だっただろう…嶺也に告白されたのは。 で、軽く色んな事考えてOKしたんだっけ。 思えばあんな条件、正直無いなって思う。 付き合って…2ヶ月ちょい。 やっと出来た4回目のデート。 まあ、行く前に一生の別れをする羽目になったが。 正直俺のせいで…とかよりももっと大きな後悔してるんだ。 ある日突然なくなった存在や居場所…今頃になって気付く嶺也への思い。 もう会えないのによ…ずっと「おかえり」が耳に残ってんだ。 未だに嶺也の声…顔…身体…優しさ…暖かさ…その全てを鮮明に覚えてる。 大嫌いは多分…俺がこの思いを誤魔化す為についた俺自身の気持ちに対する嘘。 こんな嘘ついてまで突き通すものなんて何もない。 俺は…本当馬鹿だ。 こんな嘘のせいで嶺也は泣く羽目になったんじゃねーかよ… 後悔の念に押し潰されて…そのまま地獄へ落ちたい なんて逃げに走りたくなる。 でも逃げても嶺也はもう戻らない。 時間も関係も…何もかも全て過去の事だ。 Time Machineなんてない、あるのは嶺也がいたという事実。
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