気付く思い…そして、未来

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墓が建てられて数日後、埋葬に立ち会って以来2度目の訪問。 刻まれた嶺也の名前を指で辿る。 そして、墓参りの手順を一通り踏んでから、墓の前にしゃがみ込み、そっと言葉を紡いだ。 語りかけるようにゆっくりしっかりと。 「…嶺也、色々とありがと。それとさ…ゴメン。」 「今日はな、嶺也に伝えたい事があって来たんだ。 えっと…その…あの…れ、嶺也は俺にとって、最初で最後の感情を教えてくれた…こんな俺でも好きでいてくれた…最高の奴。だからかな…やっと気付いたんだ。」 「嶺也の事が……今までも、今も、そしてこれからも…だ、大好きだ!『だった』なんて言える程、俺はまだ整理がついてない。だけど、この気持ちは嘘なんかじゃない。」 「今までの発言行動…全てを信じなくてもいい。都合のいい奴と思ってもいい。でも、今言ってる言葉やこの想いは…信じてほしいんだ。」 「嶺也が大嫌いって思ってた。けど、本当は大好きなんだって事を…今更ながらに自覚した。手遅れでもいいから…伝えたかったんだ!俺の…ホントの気持ちを!」 「聞こえてるなら、返事ぐらい聞かせろよなぁ…ばかっ…!」 馬鹿なのは自分なのに、それでもこう言ってしまうのは、多分…感情がこれ以上抑えられないからだ。 「嶺也が…さ、寂しいだろうから…ま、また来るよ。」 真っ赤に染まっているであろう顔面を隠すようにして、墓を後にした。 ーーーちゃんと伝わりましたから…安心して下さい、紫月さん。 ーーー紫月さんが来るまでノンビリ待ってますから。 ふと、そんな返事が聞こえた気がして、振り返ってみた。 だが、そこには柔らかな風に靡く草花と、真っ白な墓しかない。 気のせいか、と歩き始めた俺の頬は緩んでいた。 カウントダウンが終わっても、また新たなるスタートを切ることが出来る。 爽やかな青空が、人生の再スタートを鮮やかに彩る中、俺は真摯な眼差しを未来に向けた。 END
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