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タツオは戦闘で砂まみれになった紙の地図を広げた。敵陣と陥落した拠点の中央あたりまで移動していた。タツオは数十メートルほど離れた地点を指さした。そこは岩が密集して視界が通りにくい地区だった。
タツオは悩んだ。いくつかある作戦のなかでも、これが最も生存率が高いような気がする。もちろん確率だから、どちらに転ぶかはわからない。それでも3人で固まったまま、敵のローラーを待つよりはましだ。だが、この作戦を遂行するには誰かを犠牲にしなければならない。
ジャクヤが銀の目でタツオを興味深い生きものでも見るように観察している。
「なにを迷っているんだ。タツオはおかしな人間だな」
テルにもジャクヤの雰囲気でなにかが伝わったようだ。いらついたようにいう。
「なんだよ。考えがあるならいえ」
タツオは地図を指さして、しぶしぶいった。
「わかった。この岩の密集地帯で、敵の索敵をかわす。岩伝いに敵のローラーの頭上を越える」
テルが笑った。
「むちゃくちゃだな。だが、おもしろい」
タツオは笑わなかった。テルを見ていう。
「だけど、それには陽動が欠かせない」
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