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タツオは自分の74式自動小銃をテルに渡した。残りの弾倉もすべて出す。残りは拳銃が一丁とマガジンがふたつ。戦場では最低限の武装で、丸腰になったように感じる。
テルはジャクヤにいった。
「例のLEDボールあるか」
「ああ、これで最後だ」
テニスボールほどの高照度の戦闘用LEDボールを3つ、ジャクヤは背嚢(はいのう)からとりだした。
「こっちも身軽になりたい。こいつを半分やるよ」
74式の弾倉をふたつ渡した。
「おお、サンキュー。無事に夜明けまで生き延びたら、どうやって奇跡を起こしたのか、あとできかせてくれよ」
手をさしだす。テルの義手とジャクヤの白い手ががっしりと結ばれた。つぎはタツオに義手が回ってくる。おかしなことに、テルの義手には体温があるようだった。テルはにやりと笑っていった。
「この義手は最新型だからな。体温センサーもあるし、感圧センサーもある。さわってるのが冷たいゼリーが女のおっぱいか、ちゃんとわかるんだ」
タツオはなんとか笑ってみせた。これからたったひとりで死ににいく仲間の冗談だった。笑えなくとも笑うしかない。
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