第一章 起原

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「分かった……」 返事をして被っていたフードを脱いだ。 癖の無い髪を掻き揚げた手に触れたピアスが左耳で揺れている。 「ここんとこ変だよ。 今日だって……」 「うん……分かってる。 疲れてるだけだよ、 言い訳にならないけど」 秋吉は腕組みをして、 鏡越しに俯く陸斗を見ていた。 陸斗は考えていた。 たしかに疲れていたのかもしれない。 そう、 あの《音》のせいで。 不定期に聞こえて来る《音》それは耳鳴りとは違うものだった。 不思議な音に自分以外の人に、 どういう感じなのか表現出来ない。 だから我慢するしかなく、 ここ何日か眠れない夜を過ごしていた。 「ふう…」 秋吉は椅子に膝を抱え座っている陸斗を見ながら、 また大きな溜息をついた。 自分のバックを肩に掛けると、 楽屋の扉のドアノブに手をかけた。
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