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「分かった……」
返事をして被っていたフードを脱いだ。
癖の無い髪を掻き揚げた手に触れたピアスが左耳で揺れている。
「ここんとこ変だよ。
今日だって……」
「うん……分かってる。
疲れてるだけだよ、
言い訳にならないけど」
秋吉は腕組みをして、
鏡越しに俯く陸斗を見ていた。
陸斗は考えていた。
たしかに疲れていたのかもしれない。
そう、
あの《音》のせいで。
不定期に聞こえて来る《音》それは耳鳴りとは違うものだった。
不思議な音に自分以外の人に、
どういう感じなのか表現出来ない。
だから我慢するしかなく、
ここ何日か眠れない夜を過ごしていた。
「ふう…」
秋吉は椅子に膝を抱え座っている陸斗を見ながら、
また大きな溜息をついた。
自分のバックを肩に掛けると、
楽屋の扉のドアノブに手をかけた。
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