序章

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見ると、 点滴が刺されている少年の小さな手が、 看護士のスカートを掴んでいた。 「どうしたの?痛いの?今、 お医者さんを呼んで……何?」 酸素マスクの中の小さな唇が動いていた。 看護士はベットの脇にしやがんで酸素マスクをずらし、 優しく笑いながら少年に問い掛けた。 「どうしたのかな?」 「……マ…は?」 「え?」 「……ママは?」 看護士の表情が固まった。 言葉が出なかった。 応えない看護士に、 掠れた小さな声で男の子は問い詰めた。 「……ママは何処?」 「…あ…あぁ……お母さんも怪我をして、 別のお部屋に居るわよ。 お父さんも……」
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