過去-2

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「…。」 証明問題の答えを書きながら、私はやはり…聖夜のことを考えていた。 あの子は…こんな複雑な答えでも、一瞬で弾き出してしまえるのよね…。…それこそ、意識が追い付かないぐらいのスピードで。 …頭を使うことを止めた聖夜は…どうしてか、却って頭が良くなってしまった。 どんな問題でも、考えるより先に答えが出てしまうのだ。 …きっと、聖夜は右脳と左脳を、極端な程に使い分けて生活しているのだと思う。 感覚的なことは主に右脳が司っている、と良く言われているから、聖夜は普段、右脳だけを使って生活しているのだろう。 勉強をする時は左脳が働いて、出た答えだけを右脳に伝える。 …そう考えると、あれだけ頭が良いのも頷けるかも知れない。 聖夜は、何も考えないことを意識する余り、右脳と左脳を使い分けるようになった。 …それはつまり、左脳では勉強以外のことを何一つ考えていない、と言うことでもある。 その結果が、あのスピードを生み出してしまっている…。 …勉強をする度に、思い出すことがある。 楽しそうに…本当に楽しそうに問題を解く、青い瞳の聖夜…。 …私達がもし、その姿を受け入れられたなら、聖夜は今でも…。
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