第1章 リクルートスーツは戦闘服

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7月。就活生が内定をもらい始める時期だ。 菜穂が全く焦っていないはずがなかった。 一ヶ月ほど前、その頃第一志望だった企業の最終面接に落ちた。 周りの誰もが、菜穂は受かるものだと思っていたし、菜穂自身、そう信じていた。 それなのに、落ちた。 なぜ落ちたのか未だにわからない。 いや、就活に「なぜ」だの「どうして」だのがないのは菜穂だってわかっている。 「合わない」と企業側が判断するから落ちるのだ。 だが、その事実は菜穂を落ち込ませるだけだった。 「お前は社会に必要ない」 そう言われているような気分になってしまうのだ。 (こんなに会社があるのに。こんなに会社があるのに、私はどこにも入れてもらえない……) 会社から駅までの道のりで、ビルの谷間をのろのろと歩くだけで、そう思ってしまうのだった。
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