1人が本棚に入れています
本棚に追加
今日で一週間。
菜穂は携帯の画面を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返していた。
先週、筆記試験を受けた会社からはまだ連絡が来ない。
「サイレントお祈り」という嫌な言葉が頭の中をよぎる。
講義なんて聞いていられるはずがなく、菜穂は机の下で携帯を握りしめていた。
だが、そんなことをしても状況は変わらない。
(やっぱりだめなのかなぁ……)
自分で言うのもなんだが、今回はかなり気合を入れて勉強した。
筆記試験はとんでもなく難しかったが、その努力が報われないかと微かに期待をしてしまう。
(もうやだ……寝よう……)
真面目に講義を聞く気もすっかり失せて、菜穂は机に突っ伏して眠ってしまった。
「菜穂!!!起きなよ!!!お昼食べよ!!!」
誰かに揺り動かされて菜穂は目を覚ました。
いつの間にか講義は終わったらしい。
菜穂を起こしたのは結菜だった。
「ゆ、結菜~……」
「菜穂、どうしたの?顔色悪いよ?」
泣きそうになりながら菜穂は結菜にしがみついた。
「やっぱりだめかもしれない……連絡が……」
菜穂が言いかけた時だった。
菜穂の手の中の携帯のランプが光った。
「来たんじゃない?朗報が」
結菜の言葉にうなずき、震える手で菜穂はメールを開いた。
「あっ……!!」
菜穂の表情に結菜の頬がゆるむ。
「結菜っ!!私………!」
「菜穂……!!やったね…!!」
ディスプレイの中には「一時選考通過」の文字が浮かび上がっていた。
最初のコメントを投稿しよう!