第1章 馬鹿と言うよりもあほ

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「高原さん、来週の水曜日出勤できないかなぁ?」 16時50分。17時出勤の10分前に事務所に到着した高原花音にオーナーの前川が言う。 「ごめんなさい。水曜日は18時まで講義があるので難しいですね……」 「そうかぁ。参ったなぁ……」 花音の返事に前川はため息をつきながら、シフト表に目を落とした。 「平日は講義の都合で火曜日と木曜日しか出勤できません」と以前から言っているのにも関わらず、人が足りないと前川は花音ばかり頼る。 通っている短大からアルバイト先のコンビニまでは一時間以上かかるため、17時に出勤するのは物理的に厳しい。 それでも「19時半からでもいいから来てほしい」と頼まれて無理矢理出勤することもある。 頼まれると断れない花音の性格を知ってか知らずか、前川ばかりでなく、他のスタッフたちも花音をあてにしてくる。 必要とされているのはありがたいが、あてにされることに花音は内心うんざりしていた。
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