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僕の隣の田中は、クラスでは人気者だ。
僕の前の席の岸田は、対照的に根暗だ。
僕の後ろの本田はヤンキーで、その横の辻浜は本田に虐められたせいで不登校。
教室の四隅に座っているメンツは何故か濃いメンバーであると、この教室を代表する四天王と奉られていて、教卓の前の二つの席に座るのは陰口言われ放題のラブラブカップルだ。
みんながみんな、それぞれの人生を持っていて、それぞれの価値観を持っている。
人間誰しも積み重なって出来た集大成である筈であって、その素性を知らない他人がとやかく言うような権利は持ち合わせていないはずなのに。
『ペラペラなんだよな、みんな』
そう、思ってしまう僕がいる。
「西川はこの後職員室に来るように」
西川とは僕の事だ。
誰も興味を示さない。2年3組の西川 杏という人間は、僕以外の誰でも無く、誰にもなれない、ただの空気だった。
例えば僕が出来心で男子に強姦を迫った所で容易く払いのけられてしまうし、その時こそ問題になれどあっさりとその潮は引いてしまう。
数時間前に僕にズボンを下げられ押し倒されていた男子も、今は他の男子と楽しく談笑に浸っている。
なんだか、損した気分だった。
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