仮題「赤」

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仮題「赤」

 最悪だ。  俺、石戸 奏多はこの人生で恐らく最も絶望的な窮地に立たされていた。  というのも、クラスの女子としていた淫らな行為が、その本人の手によりクラス中に知られてしまったからだ。 しかもその時の状況はほぼほぼレイプだったので尚更やばい。ばら撒かれたと思しき写真はそれを如実に語っており、その時は力尽くで写真を消去したが、LINEに一度でも貼った写真は消すことができない。  今はその事件が起きて4日後の朝。俺は仮病を使い学校を休んできたが、とうとうそれも限界のようだ。親に仮病がバレてしまった。  写真の事は学校から既に近隣の住民や保護者の耳にも広まっている。心無しか親が俺に素っ気なくするのも、俺が犯人であると暗に指し示しているからだろうと、そう思えた。 「……おはよう」 「おっ! 石戸っちじゃん、ひさしぶりー!」 「お、おお? ひさし……ぶり」  教室に入るといつもつるんでた脇山がいつもと変わらない調子で声を掛けてきた。  あれ? 思ってたのと反応が違う……。俺の事を避けるか批判するかと思っていたが……こいつは馬鹿だからすぐ周りに流される上に何か起きれば平然を取り繕うって事が出来ない。 「ちょっと石戸! あんた今まで何してたのよ!」  今度はあまり話した事のない、気の強い女子がやってきた。 「まさか……あんたが西川さんに乱暴した犯人!?」 「それは」「石戸っちはそんな事しねえよ!!」 「なんでそう言い切れるのよ!? あんたらグルなんでしょ!!」 「なんでそうなるんだよ!! 俺らは何もしてねえし無関係だっての!! なぁ、石戸っち!」 「えっ……あ、ああ」  俺が返事すると女子はまだ信用しきれていない顔をして引き下がった。  教室中、あの事件の話題で包まれていた。被害者の西川に誰に襲われたのかを聞く野次馬。犯人当てに精を出すさっきの女子含む女子グループ。教室の隅でニヤニヤしながら噂する男連中。いずれも、犯人がまだ分かっていない故の行動を取っていた。  バレて……無いのか?  恐ろしさのあまりLINEを見るのを躊躇っていたが、例のグループチャットを見たところ、貼られていた写真は俺と西川の局部が繋がっている写真のみだった。
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