仮題「赤」

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 またあの感覚に支配される。でも今日はあの時とは違い、主導権は西川にあった。 「あはっ、これこれ」  本棚に背を預ける俺に、西川が自分の身を押し付ける。下半身の疼きが、包まれる快感に支配される。西川は俺の体にぴったり張り付き、その小さな背丈で淫らに腰を動かす。 「……お前、頭おかしいんじゃないか」 「自覚はしてるよ。僕は変態だ。だからきっと、今までだって全部が全部つまらなかったんだ。でも、今の僕は存分に人生を謳歌出来ている。それもこれも、全部が君のおかげだよ石戸くん。ありがとう」  西川が俺の胸板に舌を這わせる。腰が溶けるような快感に我慢出来ず床にへたりこむと、西川は完全に俺にまたがり恍惚な表情を浮かべた。  長く永く、永遠とも思えるような時間。  本当はこの状況が良くないことで、また事態に油を注いでいる事なんだって分かっているはずなのに。本能的にこの行為を求めるあまり、正常な判断が出来ず身を任せてしまう。  まだ子供でありながら、俺は西川の体にすっかり溺れていた。 「……んっ! あはっ。また、中に出しちゃったね」  俺と果てた後、すぐに果てたのかグッタリして俺に体を預けた西川が言う。 「……まだこんな事する気なのか」 「うん。君が僕の奴隷でいる限り、ずーっと続けるつもりだよ」 「奴隷ってなんだよ。喧嘩売ってんのか」 「奴隷みたいなものでしょ。僕がみんなに有る事無い事好き勝手に言おうと、それを裏付ける証拠があるんだ。僕が君を見放した時点で君は絶対に社会的に死んで一人になる。友達もいなくなる。そんな状態で弁明や僕を陥れる事を言おうと、君の言葉はすでに意味を無くしてしまってるんだから何も変わらないし何も起きない。……僕は良い人じゃないから、全然話した事のない君ならどんなタイミングでも陥れられるんだよ」 「……お前、俺とセックスしたいだけなのか」 「そうだよ」 「……別の人とヤれよ。脇山とかも女体に興味あるしエロ本とかよく見てるし、あいつなら文句言わずヤらせてくれると思うぞ」 「君は、僕とするのは嫌なの?」 「えっ」 「……」  西川は無言で俺の返事を待つ。  西川とエロい事をするのは嫌なのか、と彼女は聞いた。……嫌ではない。クラスの女子とエロい事をするのはかなり興奮する。 「……」  ただ俺は、何故か何も言えなかった。
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