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「そう......美緒さんの事です。リストカットをしたという話を聞いて、居ても立ってもいられなかったんでしょう。
金山さんからの依頼の一つである殺害犯の抹殺については、全てが物理的要因ばかりなので、我々からしてみれば決して難しい仕事ではありませんでした。
しかしもう一つの依頼については我々も散々頭を悩ませました。
仮に殺人者から美緒さんを守ると言う依頼であれば、殺人者を排除するか、近付けなければいいだけの話です。
ところが話が自殺と言う事になると、殺人者と本人が同一人物になる為、排除する事も遠ざける事も出来ない訳です」
ここでエマは一旦呼吸をおいた。
美緒は無言で話に聞き入っている。
エマは続けた。
「まさか美緒さんを一日中縛っておく訳にもいきませんし、二十四時間三百六十五日美緒さんを見張っている訳にもいきません。
人間の心理という視点から言うと、誰しも必ず反骨心というものを持っています。
本人の意志に反して無理やり何かを強要すれば、必ずその反骨心を刺激する事となり、増々自殺願望を増幅させてしまう事になります。
そこで私達は考えました。どうすれば、美緒さんの自殺願望を取り除く事が出来るのかと言う事を」
「もしかして私の命をとると言ったのも......」
美緒は徐々にエマ達の考えがよめてきた様子だ。
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