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扇風機
リサイクルショップで扇風機を買った。
中古というよりアンティークな雰囲気で、掘り出し物だと思ったが、いかんせん、あちこち傷んでいるらしく、使うと結構大きな音がする。
それでも気に入って買った品だからと、たしょうのやかましさには目をつむっていたが、ついに昨夜、どうにも耐えがたい騒音がした。
今にも分解するんじゃないかという音に、慌てて扇風機を止める。でも、どんなに眺め回しても異常はない。
原因を特定するために、もう一度だけ動かしてみようと、スイッチを入れた瞬間、はっきりと音が…いや、声が聞こえた。
ぎゃぁぁぁぁ!! 指ぃぃぃ!
回る扇風機の羽根が、赤い滴りを四方に散らす、それに驚き、慌ててスイッチを切ったが、動きを止めた扇風機には、異常は何一つ見られなかった。
あまりのことに、この夜は暑さに耐えてでも扇風機を使わずにいた。
そして翌日、リサイクルショップの人が何か事情を知ってないかと、店を訪ねてみたのだが、そこにリサイクルショップは存在していなかった。
何があったのかは判らないが、あの声と飛び散った赤い滴りの幻だけで、およその見当がついてしまう扇風機。
とりあえずビニールでくるみ、使用不可というよりは封印という形にしてあるが、はたしてこれを迂闊に捨てていいものか、それが俺の悩みの種だ。
扇風機…完
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