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「はい、こんにちは。いやあ、嫌がって徹夜でもされたらどうしようかと思ったよ」
「…………疲れ、ちゃって」
雑用明けで使った筋肉は、いつもと同じ時間に睡眠休養を要求し、当初は恐怖で眠れないと思っていた私を簡単にこの世界に誘った。昨日とは違う服と、オレンジのベッド。あとは全て白い世界に、少年は変わらず座っていた。
特に変わっている様子もなく、遠回しに「来たくはなかったけど仕方無く」と伝えたのにも関わらず、だ。
優雅に紅茶なんて飲んでいて、何様のつもり………と言おうとして、やっぱりやめた。私をここに連れてきているのが彼だとすると、もしかすると彼を怒らせたら帰ることができない可能性がある。
「大丈夫、そんなことはしないよ。身体に外的刺激があればすぐに帰れる。これからは目覚ましでバッチリ目が覚めるよ」
「………そう」
「逆に、内的刺激では戻れないから、寝る前に水分を摂らないようにね。尿意では目が覚めないから」
「田中くんの中の人はセクハラが好きなの?」
「認めてもらえたようで何より。いやいや、ここに人間を呼ぶにあたって一番大切なことかなと」
「じゃあ覚えておいて。女性にそういうことを言わない」
「覚えておくよ。それで、ここが田中くんの中の世界ってことは信用してもらえたかな?」
「信じ………ないと話が進まないし、良いわよ。信じるわ」
「これはどうも、気を使わせまして」
恭しく頭を下げるが椅子の上。礼儀は分からないし気にもしていない。それに、私が考えたこと全部が筒抜けみたいだし、何も言わずとも話し始めるだろう。
「その通り。じゃあ説明させてもらおう」
ほら、こういう風に。
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