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「田中くんが日々頭の中で世界を作っているのは君も知っているね。彼の世界はかなり現実的で、設定が作り込まれている。例えば、彼の世界の人間は全員に細かい設定がある。物語に絡まない、それどころかモブですら登場できない人間にもだ」
それは普通じゃないの。
「いやあ、普通じゃない。君が例えばお話を書いたとき、『この、主人公が告白しているとき、隣の村の村長さんは何をしているの?これまで登場していないけど』って聞かれて即答できるかい?」
田中くんは即答できると?
「そういうことさ。そして、彼らは全員、解釈や見方は違えど一つの神を崇めている。それがボク。要するにボクは神だ。崇めたまえ」
なかなか電波な事を言う少年だけど、それはおかしいと突っぱねることもできないのが現状だ。実際に私は訳のわからない世界に閉じ込められている……いや、招待されてきている。今さら神の一人や二人、信じても良いのではないだろうか。
神様は、私の頭の中を読んだのだろう、納得したように頷いた。
「うんうん。素直な子は好きだよ。そして、彼の作った世界の総数は約百個。正確には九十にもなる。全部で数十億かけることの九十の人間や生命体が、ボクの事を信仰していることになる。まったく全員とは言わないけどね」
「それで、それがどうしたんですか」
「お、驚かなくなったね」
驚いても話が進まないだけだと言ったはずだ。謎が残ると昼間に集中できない。クラス全員の問題集とノートを提出するのはなかなか骨が折れた。
「そりゃあ大変だったね。ところで、神と言うのは信仰を受けないと存在できない………これは日本人の君にも分かるかな?」
多少は分かる気がする。誰も信じない神様はいないも同然。うん、筋は通ってる。そうすると神様が世界を作ったってのは矛盾していることになるけど。
「まあこの世界の神様の話は置いておいて、ボクもそうやって、田中くんの世界の人に信仰されてここに顕現している。でもよく考えてみて。君の世界で同じ神を信じているのは何人だい?」
地球の神………倫理で習ったのでは、基本的に名前や細かい設定は違っても、信じているのは同じ神。仏教とかは違うから、多くとも七十億より少ないはずだ。たぶん。
「うん、そうだね。でもボクは違う。田中くんの中とは言え、数十億かける九十の信仰を受けているんだからね」
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