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「これが私の本当の好みかぁ………ちょっとショックだなあ」
「………ま、明晰夢だと思っているならその態度にも納得がいくね」
これは年の差があれば良いのだろうか。それともこの年齢の子しか好きにはなれないということか。それは困る。高校一年生ならまだギリギリセーフかもしれなくても、二十歳を過ぎ三十路くらいまで行ってしまえば手が後ろに回りそうだ。
いや、ここは夢なのだし、例え自分の隠された性癖に気が付いたとして、現実で手を出さなければ良いのか。なるほど。
「まあ良いや。勝手に思考の海に沈んでてよ。ボクはボクで好きに話すから」
「……そう言われて続けられる人もなかなかいないよね」
「あ、こっちの話を聞いてくれる?ありがと」
不思議な子だ。結構失礼なことをした自覚はあるけど、全く傷付いた様子も無いし、当然のように語り続ける。
「ようこそ、ハルカ。ここは田中奏多の脳内………のような、違うような。そんな精神世界だよ」
耳を疑った。と同時に、説明を求めようと後ろを振り向いて、ベッドに腰掛けるように座る。彼は真っ白な背景で真っ白な椅子に座っていた。よく見ないと空気椅子か何かにも見えてしまう。堂々と足を組んでいた。
「田中奏多………?あ、田中くん?が………なんだって?もしかして私、ついに夢の中でも田中くんを見るようになっちゃった?実は私田中くんのことが好きなの?いや、そりゃ外見は結構良い男だけど、妄想癖がある人はちょっと………」
「ころころ表情が変わって面白いね。まあまあ、順番に説明しよう。何か欲しいものはある?出すよ」
「ふ、ふふん、明晰夢だから、私が望めば何でも出来るはずよ。甘いものでも食べよっと………むむむ」
ベッドの横にいつのまにかテーブルが設置されていた。自分の思い通りになるのなら、こうやって手を向けて念を入れれば………何もならない。
「あ、あれ?おかしいな。明晰夢って………あれ?」
「君はやたら明晰夢に詳しいみたいだけど、だったらこうすれば、ここが夢じゃないって証明できるかな?」
頭にハテナが浮かぶ私。振り向いたとき彼が持っていたのは、刃渡りが確実に銃刀法に触れるだろう、いわゆる脇差しと呼ばれる日本刀の一種だった。
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