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「た、ただの刀じゃなくて脇差しってのがちょっとリアルね」
「お、わかる?」
「日本史で習ったわ……」
抜き身のまま持たれたそれは、きっと私くらいは簡単に貫通し、その上、内蔵さえバラバラにしてしまうのだ。その刃先が向けられているとなれば、むしろ失禁しなかったことを褒めてほし………ああ、やっぱり目覚めたくないなあ。
「まあ、ここで漏らしても平気だよ。夢でやっちゃうのとは訳が違う。温かくないだろう?」
「そ、そんなに出てない!!」
そう、ほんのちょっと。ちょっとだけ。湿ったかなー?くらい、のはずだ。弁解をしてみても、男の子は笑うばかりで取り合おうとしない。だから、刃物も降ろされない。
「明晰夢の中、正確には夢の中も同じだけれど、夢の中の身体は現実の体と同じように五感を持つ。痛くないから夢ってのは正確じゃない。その感覚が極まっていくと目が覚めるわけだけど、じゃあ漏らした君はどうして目覚めないのだと思う?」
「漏らしてないっ!!」
「それはね、ここにいる君は精神体だからだよ。ここにいる限り君は何も感じないし、ここで何があっても記憶くらいしか引き継がれない。ほら、後ろを見てみると良い」
刀を突きつけて何の脅迫かと思った。でも、振り向いた私は検討違いを悟る。
「え………あ………?」
左肩甲骨を貫通するように刺さった、小さめのナニか。抜かなくたって分かる。これは刃物だ。頭が冷える。夢の中で死ぬと、現実でショック死する可能性だって……!
「あああ!!!!」
我ながら錯乱してそれを抜き去る。放り投げると、綺麗な銀色が世界にアクセントを与えた。体を大きく動かしすぎて、ベッドから転げ落ちるけれど、それくらい気にすることじゃない。何よりもこの傷と痛みが………痛み?
「痛く………ない」
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