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「そんなことでダイワークは危機に陥らないだろう?」
ジェニーはのほほんとした口調で言う。ここは百年先の風向きを知ると言われるイルマ・ラーデンの船室である。
「坊ちゃん、それがそうでも無いのですよ」
イルマも軽い口調で返す。
今、この部屋に居るのは、ソフィアの狂った野獣と呼ばれるミハイル・カルツェと、ジェニー・ファミリーで最も残念な男と呼ばれる銀髪のシェルスター……それとソフィア史上もっとも無謀な王、無謀王と呼ばれるジェニー、それとイルマの4人である。
ちなみに、無謀王ジェニーについては、彼を王にすることが無謀なのか、王本人が無謀なのかは分からない……
「ダイワーク海軍は人材不足に悩んでいます」
ジェニーは腕組みをして小首を傾げて悩む。そのまま首が落ちてしまうのではないかと思うほどにクルリと回している。本当に身体が柔らかいのだろう。
「……心配ですか?」
ミハイルがニヤニヤと笑いながらジェニーに聞いた。
「えっ?何が?」
「……いや、別に」
今度はミハイルはすっとぼけた表情で言う。
「……」
「……赤毛の少将、可愛いですね」
ミハイルのその言葉にジェニーは彼をギロリと睨む。
イルマは表情を崩さないが、シェルスターはギョッとした表情で一歩後ろに引いた。
「ミハイル、何が言いたい?」
「相手が同盟国とは言え、要請も無いのに軍は動かせません」
ミハイルはキッパリと言う。
「別にソフィアにダイワークを助けて欲しいなんて思ってない」
「……赤毛の少将を助ける良い方法があります」
ミハイルは自信満々に言った。
この言葉にイルマとシェルスターは頭を抱える。また単身乗り込もうとでも言うのか?国王とごく限られた側近だけで他国に乗り込むぐらいなら私情を挟んで軍を動かした方が良いに決まっている。国王が一人で他国の揉め事に首を突っ込む事など国民は望んでいない。
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